睡眠損失が積もれば病気になることも
睡眠とは
人生の1/3は睡眠です。いかにして良い睡眠を取るかという問題は、いかにして良い人生を送るかという問題と直結しています。しかし、睡眠の重要性は理解していながら、実際はあまり重視していない方も多いのも現実です。
近年、日本人の睡眠時間は年々短くなっています。頑張れば、睡眠時間を短くできると思っている人もいる一方で、頑なに何時間以上睡眠時間を取らなければいけないと思い込んでいる人もいます。はたして、良い睡眠とは睡眠時間だけで決まるのでしょうか。その人に適した睡眠時間だけでなく、睡眠の質が大事です。一晩の睡眠経過は模式図のように、レム睡眠・ノンレム睡眠の周期で構成されています。この周期で、深い睡眠時間が長いことと、中途覚醒が少ないことが、質の良い睡眠の条件です。睡眠の質は、専門機関での睡眠検査を行わないと判りません。日本にはそういう施設が少ないのが問題点です。
皆さんは睡眠を甘く見ていませんか?「昨日ちょっと夜更かしして。。。」なんていうのは、平気かもしれませんが、それが続くと体に思わぬ変調を来たす可能性があります。
よく眠ることが重要な理由
米ハーバード大学(マサチューセッツ州)発行のニュースレター「Harvard Women’s Health Watch」によると、睡眠をけちると健康問題につながるとして、十分な睡眠をとらねばならない6つの理由を挙げている。人生の1/3を占める睡眠は残りの2/3をスムーズにすごすための原動力です。単に体を休めるための物ではありません。今一度睡眠の大切さを考えて見ましょう。
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01 記憶のため
睡眠は学習と記憶を助ける。眠っている間に、脳は「記憶の固定」と呼ばれるプロセスで新しい情報をとどめている。 -
02 スリムでいるため
慢性的な睡眠の欠如は、炭水化物を代謝し蓄積する過程に影響を与え、食欲をコントロールするホルモン値を変え、体重増加を招きかねない。 -
03 安全のため
夜十分に睡眠がとれていないと、日中眠くなりやすく、転倒や交通事故、仕事上でのミスのリスクを増加させる。 -
04 幸福のため
睡眠の欠如は、かんしゃく、短気、集中力の欠如、不機嫌を招く。また自分が好きな活動をするときに、疲れすぎていることになる。 -
05 心臓のため
重度の睡眠障害と高血圧、ストレスホルモン値の増加、不規則な心拍との関係が研究からわかっている。 -
06 健康的に強い体をつくるため
睡眠の欠乏は免疫系を低下させてしまう。
眠くなる疾患
- ナルコレプシー
- 日中に突然に、前兆もなく、睡眠発作に襲われ、入眠時幻覚、睡眠麻痺(かなしばり)、カタプレキシー(情動性脱力発作)などを伴う疾患です。原因として、脳幹網様体系の機能障害が考えられております。意識障害は認めません。本疾患は遺伝性素因な関与が大きいと考えられています。思春期から青年期にかけて初発する場合が多いです。脳波検査で、特徴的な所見を認め、治療は中枢神経を覚醒させる薬剤が用いられます。また、カタプレキシーには三環系坑うつ薬が有効です。
- 仮眠症
- 睡眠時無呼吸症候群、ナルコレプシーなどの疾患を除外した後に診断される疾患です。
眠れない疾患
- 不眠症
- いわゆる不眠症は、後述する睡眠障害を除外して初めて診断がつく病気で、不眠を呈する睡眠障害の中で最も多く見られます。一時的に何らかの要因で不眠を認めることは良く見られる現象ですが、慢性的に不眠が続くと問題です。現在の睡眠薬は効果が高く、安全性も向上しています。患者さんによっては、睡眠薬について副作用を心配される場合もありますが、十分な説明と適切な投与を行うことで、不安を取り除くことが重要です。
- むずむず脚症候群
- むずむず脚は、夕方から夜にかけて下肢に不快な感覚が起こり、入眠困難が生じる症候群です。特徴的な違和感は、むずむずする感じ、痛い感じ、虫が這う感じ、痒い感じなど多彩な表現で訴えられます。むずむず感は足を動かすことで軽減されるので、落ち着きなく足を動かしたり歩き回ったりします。貧血症や腎臓病、特に透析患者さんに合併することが多く、原疾患を治療することで改善することがあります。治療は、睡眠薬は効きにくく、睡眠障害の原因になっている不随意運動の抑制薬が用いられます。
- ぴくぴく脚症候群
- ぴくぴく脚は正確な病名は周期性四肢運動障害と言います。睡眠中に下肢の反復持続する不随意運度が起こるため、中途覚醒が生じます。客観的には睡眠中に足の背屈や膝および股関節のピクンとした屈曲が見られます。しかし、本人は自覚しないことが多く、ベッドパートナーに聞く必要性があります。むずむず病と合併することが多く、治療として睡眠薬は効きにくく、睡眠障害の原因になっている不随意運動の抑制薬が用いられます。
- うつ病
- うつ病ではほとんどの患者さんで、中途覚醒や早朝覚醒が見られます。不眠の多くは、数週間から数ヶ月にわたって毎晩のように認める持続性不眠です。うつ病の初期症状として不眠のみを認める場合があります。症状が続けば、早期に専門医を受診することが大事です。
現在わが国では、約5人に1人の割合で睡眠の問題を抱えています。また、20人に1人が過去1ヶ月間に何らかの睡眠薬を服用しています。不眠を引き起こす睡眠障害はさまざまであり、専門医療機関での検査をしないと最終的に診断確定できない睡眠障害もあります。