SASは自身だけでなく、周りに悪影響を招くことも
SASによるリスク
睡眠時無呼吸症候群はなにが問題になるのでしょうか。大きく分けると2つになります。1つは患者さん本人への悪影響、もうひとつは周りの方への影響です。自分への影響は生活習慣病です。SASが生活習慣病を悪化させたり、発症させたりするのです。SASは生活習慣病の起爆剤といえるでしょう。周りの方への影響は眠気による事故などです。
生活習慣病
SASの研究が始まった1980年代ごろから、SAS患者さんは、健康な人と比べて、早死すると言われていました。原因は心臓病などが原因だろうと言われていましたが、きちんとした調査がされておらず、はっきりしたことはわかりませんでした。
しかし、近年では、高血圧や心臓病、糖尿病など生活習慣病とSASの因果関係がいろいろな研究からわかってきました。その結果「SASは生活習慣病を呼ぶ!」といえるようになりました。健康の方と比べて中等症以上のSAS患者さんは以下の疾患になりやすいとの報告があります。
高血圧約2倍 / 冠動脈疾患約3倍 / 脳卒中約4倍 / 糖尿病約4倍
致命的な心疾患のイベント
上のグラフは致命的な心疾患のイベント(アタックなど)の発生度合いを見ています。一番上の赤い実線が重症のSASの患者さんです。144ヶ月(12年)後は他の健常者、治療患者の方と比較して、明らかにイベント発生頻度が高いことがわかります。治療をしないと、知らず知らずにこんな恐ろしいことが体に襲い掛かってくるのです。
しかしブルーのラインのようにCPAPで治療をすると、ほぼ、健康な方と同じレベルになることがわかります。しっかり治療を行い、自分の体を守りましょう。
健康診断の結果が思わしくなかった方、無呼吸を指摘された方など、早期に専門医療機関を受診して、治療を行いましょう。SASを治療することで、生活習慣病も改善することがわかっています。お薬の量を減量できる場合もあります。
社会的影響について
SASは昼間眠くなると前に書きました。この眠気ですが、車の運転中、工場での作業中、会議中、商談中、いつでも時と場所を選ばず襲ってきます。そのため、労災や交通事故を引き起こし、作業効率が下がり、経済的損失にもつながります。
アメリカではこの眠気による損失を国家的に見直そうと、1990年代からWake Up America!というプロジェクトができ、すでに報告書がでています。この中にはスペースシャトルのチャレンジャーの打ち上げ直後に爆発した事故、整備作業員の眠気による作業ミスによる事故とかかれています。
日本でも今世紀に入り、厚生労働省が睡眠に関して取り組みを始めています。交通に関係している業界では、国土交通省の指導の元、SAS診断を義務付けるなど国、企業、団体一丸となって交通の安全に力を注いでおります。 マイカードライバーの方も安全に対する心がけは必要です。
悲しい事故を防ぐためにも、睡眠時無呼吸症候群に心当たりのある方は専門病院・クリニックを受診しましょう。