高血圧の陰に睡眠時無呼吸症候群?
高血圧とSAS
高血圧症患者は全国で約3500万人とも言われ、高血圧はまさに国民的疾患です。高血圧症の90%は本態性高血圧症と言われ、生活習慣に関与したものです。二次性高血圧症は体の中にはっきりとした原因があるものです。SASと高血圧は関連性が強く、高血圧の陰にはSASが潜んでいることも多いのです。
なぜSAS患者は高血圧を起こすのでしょうか?
現在有力な説は次のような機序です。
- 交感神経の亢進
- 短期覚醒直後の一過性の血圧上昇
- 無呼吸と短期覚醒に伴う血圧変動による夜間睡眠中の高血圧
- 夜間高血圧を伴う血圧変動が日中の高血圧合併に関与
海外での研究では、同じ体重でもSASの人は健康な人に比べて約3倍高血圧になりやすいというデータがあります。日本でも循環器の先生方を中心に、SASと高血圧の関連性に注目する先生方が増えています。
治療抵抗性の高血圧
高血圧症のなかには薬が効かない治療抵抗性の高血圧があります。ある調査によると治療抵抗性の高血圧患者のSAS合併率は83%であったとの結果があります。
この患者さん達の治療抵抗性への原因のすべてがSASとはいえませんが、夜間頻発する無呼吸により、高血圧になり、薬物ではコントロールできなくなっていると考えられています。
SASとの合併症状チェック
- 昼間眠い
- いびきをかく
- 無呼吸を指摘された
- 肥満、特に首周りが太い
- 薬を服用しても血圧値が高い
- 家族にSASの方がいる
- 睡眠を十分にとっているにもかかわらず、疲れが取れない
※ 高血圧の方で、上記の症状にあてはまる方は受診をお勧めします。
- 多くの高血圧治療薬を飲んでも効果が乏しい方は、SASの存在を考えて下さい。
- SASに高血圧を合併されている患者様は、是非SASに詳しい内科専門医を受診されることをお勧めします。
早朝高血圧について
早朝高血圧とは文字通り早朝に血圧が高い状態を意味します。通常は夜間の血圧は日中より低下しています。しかし、様々な原因で早朝高血圧が起こります。また、早朝高血圧は脳卒中のリスクが高いことでも知られています(脳・心血管疾患の危険性が3-6倍高い)。早朝高血圧は大きく次の2つに分類されます。
- Dipper型
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血圧が夜間に大きく低下し、起床とともに著しく上昇する。
原因 血管の硬化・圧受容体反射の障害など(加齢に伴うことが多い)
- Non―dipper型
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血圧が夜間に低下せず、そのまま起床後に持ち越す夜間高血圧型。
原因 睡眠時無呼吸症候群・糖尿病・心不全など
Non-dipper型は抗圧薬に反応しにくく夜間高血圧が持続します。そのため、心臓や脳に負担を掛けて、脳卒中や心不全の原因になります。早朝高血圧症・抗圧薬が効きにくい患者様は是非、睡眠時無呼吸症候群の可能性を考えて検査を受けて下さい。表のようにSAS患者ではCPAPにより早朝高血圧が改善します。
CPAP治療による高血圧症への効果
SASを治療することによって、無呼吸はもちろん高血圧もコントロールできます。特にCPAP治療では高血圧が劇的に改善されたという報告があります。SASの患者さんは夜間に「無呼吸」と「呼吸の再開」 を繰り返します。この呼吸の再開の時に血圧は上昇します。1時間に20回無呼吸があれば、20回血圧の に上昇下降を繰り返しているのです。しかしCPAP療法を行うことで、そのような不安定な血圧を安定な状態にまで回復させることができます。またSAS患者様の中には、CPAP治療により降圧治療薬を中止できた方もおられます。