睡眠中に何度も呼吸が止まり、安眠できない病気
睡眠時無呼吸症候群 (SAS)
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)とは、睡眠中に呼吸が止まったり(無呼吸)、喉の空気の流れが弱くなった状態(低呼吸)が1時間に何回も起こる状態のことです。
一般的に1時間にこの状態(10秒以上の無呼吸もしくは低呼吸)が5回以上ある場合を睡眠時無呼吸症候群と定義します。この1時間あたりの回数を無呼吸低呼吸指数(AHI:Apnea Hypopnea Index)といい、重症度を決めるときに使用します。
無呼吸低呼吸指数(AHI)の水準値
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- 0〜5
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正常な範囲
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- 5〜15
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軽症
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- 15〜30
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中等症
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- 30以上
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重症
2003年に起きた山陽新幹線の事件を覚えていますか?この事件の概要は、新幹線を運転中の当時33才の運転士が居眠り運転をし、岡山駅で新幹線が緊急停止しました。のちの報告で、この運転士は睡眠時無呼吸症候群だったことがわかりました。これは睡眠時無呼吸症候群の特徴をよく捉えた事件と言えるかもしれません。
SASの原因
無呼吸はどうして起こるのでしょうか。一般に以下のようなことが原因と言われています。
- 肥満のため首が太く、気道を塞いでしまう。
- 舌が大きく喉を塞いでしまう。
- 軟口蓋と呼ばれる鼻と喉の境の部分が垂れ下がる。
- 顎が小さい、後退しているため、気道の断面積がもともと小さい。
- 鼻の空気の通り道が曲がっている。
- 扁桃が大きかったり、アデノイドがある。
- 寝ているときに喉がふさがりやすい体質
SASの症状
- 睡眠中の呼吸停止といびき
- 睡眠中に呼吸が止まり、呼吸が再開するときに大きないびきを伴います。閉じている気道を胸を一生懸命に動かして一気に広げ、空気が通るときの音がいびきです。
- 日中の眠気、寝不足
- 昼間に眠くなったり、熟睡感がないと感じるようになります。普段通り正常に眠っていると思っていても、実は脳は寝ていないのです。浅い睡眠を繰り返すために本来必要な睡眠がとれていないため、その分、昼間、睡眠を補おうとします。その実態が、昼間の眠気です。
- 記憶力の低下
- 睡眠は脳の情報整理やチャージの時間でもあります。眠れていないということは、この作業が出来ないわけですので、記憶力や作業効率の悪さにつながります。
- 起床時の頭痛
- 無呼吸状態に陥るため、体に酸素が回りません。脳も酸欠を起こしています。これが原因となり、起床時に頭痛を患うようになります。
- 夜間、何回もトイレに行く
- 無呼吸状態の時、交感神経は興奮状態になります。交感神経が興奮しているとき、体は尿を作ります。それによって何回もトイレに行きたくなり、安眠の妨げになります。大人は寝ていても尿がたまったことに気が付き、トイレに行きますが、子供はお漏らしをしてしまうことがあります。つまり子供の夜尿症の原因には、主に無呼吸があげられます。
- インポテンツ
- ED(Erectile Dysfunction:勃起不全)は睡眠と深くかかわりがあります。SAS特有の睡眠で見られるような途切れた眠り(覚醒反応)やレム睡眠の欠如によりEDが出現すると言われています。欧米の調査ではED患者さんの1/4に睡眠時無呼吸があったとの報告もあります。
閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSAS)
閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の原因として、まず思いつくことは肥満ではないでしょうか。確かに、肥満により首周りの脂肪が上気道(空気の通り道)を狭くし、その結果、夜間睡眠中に上気道が閉じてしまうことが、OSASの大きな要因です。しかし、肥満がないにも関わらずOSASになる患者様がおられます。欧米人のOSAS患者様の多くは肥満が原因ですが、日本人の場合は、OSASの内、約3割の患者様は肥満ではありません。残りの7割の方が肥満を伴っていると言われています。
では、肥満ではない方は、なぜOSASになるのでしょうか?大きな要因は顎の形です。日本人は民族的に元来、上気道の構造が小さいのです。この小さい構造の中で、さらに顎が気道側に後退していれば、ますます上気道を狭窄することになります。また、顎が小さければ、舌根(舌の付け根)が落ち込みやすくなり、上気道狭窄の要因となります。現代人は、食生活の変化で年々顎が小さくなり、後退しつつあります。今後、このような顎が原因のOSAS患者が増加することが考えられます。