睡眠時無呼吸症候群(SAS)は死亡に繋がることもある。生存率は?
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、本人が気付かないうちに身体に大きな負担がかかっているため、時には突然死に繋がることもあります。睡眠時無呼吸症候群による死亡は、大人だけでなく子どもにも起こる可能性があるため注意が必要です。
睡眠時無呼吸症候群による死亡は、睡眠時無呼吸症候群を放置することで心筋梗塞や脳梗塞などの重大な病気を引き起こすことが原因です。また、睡眠時無呼吸症候群による強い眠気から交通事故に繋がるケースも報告されています。
本記事では、睡眠時無呼吸症候群で死亡する原因や生存率、子どもの睡眠時無呼吸症候群について解説します。
睡眠時無呼吸症候群と突然死
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、いびきが大きくなる・寝ている間に呼吸が止まるだけの病気ではありません。睡眠時無呼吸症候群は、突然死に繋がる場合もある恐ろしい病気なのです。
呼吸が止まると、身体や脳は酸素が行き渡らず酸欠の状態になってしまいます。この状態を放っておくと、心臓や脳に悪影響を及ぼし、場合によっては突然死を引き起こしてしまいます。
睡眠時無呼吸症候群で死亡する原因
睡眠時無呼吸症候群による無呼吸状態を放っておくと、高血圧や糖尿病などの合併症が発生しやすくなります。これらの合併症は、心筋梗塞や脳血管疾患などの重大な病気に繋がっているため、場合によっては死亡の原因となるのです。
また、無呼吸状態によって血液中の酸素濃度が大幅に低下し、眠ったまま夜間に突然死してしまうケースも多く発生しています。
さらに、睡眠時無呼吸症候群による強い眠気から、交通事故を引き起こす場合もあるため注意が必要です。
心筋梗塞
心臓の病気の中でも近年増加しているのが、心筋梗塞です。心筋梗塞は心臓の冠動脈が塞がってしまう病気で、激しい胸の痛みが15〜30分以上続き、冷や汗や吐き気を伴う場合もあります。
睡眠時無呼吸症候群による無呼吸状態によって全身に酸素が行き渡らなくなると、心臓に大きな負担がかかります。その結果、心筋梗塞を引き起こして死に至る恐れがあるのです。
また、睡眠時無呼吸症候群のある人は次に挙げる症状を併せ持っている可能性が高いと考えられています。いずれも動脈硬化の悪化に繋がる要素であるため、注意が必要です。
- 肥満
- 高血圧
- 糖尿病
- 慢性的なストレス
これらの理由から、睡眠時無呼吸症候群の治療を行うことで、心臓の重大な病気を予防することにも繋がるのです。
脳血管疾患
睡眠時無呼吸症候群の合併症として、脳梗塞や脳出血などの脳血管疾患を引き起こす場合があります。脳梗塞は脳の血管が詰まって酸素や栄養が行き渡らなくなることで脳細胞が死んでしまう病気です。また、脳出血は脳の血管が傷付いて出血を起こしている状態を指しています。脳血管疾患を発症すると、次のような症状が現れることが多くあります。また、脳血管疾患は死亡率が高いうえに、重大な後遺症が残るケースもあります。
- 運動機能の麻痺
- 感覚機能の麻痺
- 言語障害(呂律が回らなくなる、言葉が出ない)
脳血管疾患も、心筋梗塞と同じく動脈硬化の悪化によって発生します。そのため、睡眠時無呼吸症候群の治療をすることで脳血管疾患の予防にもなるのです。
夜間の突然死
睡眠時無呼吸症候群の人は、健康な人に比べて夜間の突然死発生率が2.6倍ともいわれています。夜間の突然死の原因の半数は急性心筋梗塞ですが、持病や合併症がない人でも突然死に至る可能性はゼロではありません。重度の睡眠時無呼吸症候群の場合、無呼吸状態になることで血液中の酸素濃度が大幅に低下します。これによって意識を失い、眠ったまま死に至る場合もあるのです。
交通事故
睡眠時無呼吸症候群のある人は、居眠り運転による交通事故の発生率が健康な人の約7倍ともされています。過去には、新幹線の運転士が睡眠時無呼吸症候群によって居眠り運転をしており、事故が発生した事例もありました。居眠り運転による交通事故は、自分自身だけでなく周りの人も巻き込んでしまう危険があります。ブレーキを踏む前に居眠り状態になると、スピードが上がったまま重大な事故を起こす可能性が高いため、特に注意が必要です。
仕事中に突然居眠りをしてしまう人は、睡眠時無呼吸症候群を抱えている可能性が高いと言われています。心当たりのある人や、仕事や通勤で運転の機会が多い人は睡眠時無呼吸症候群を抱えていないかチェックしておきましょう。
睡眠時無呼吸症候群の生存率
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠1時間辺りの無呼吸回数が5回以上である状態とされています。また、睡眠1時間辺りの無呼吸と低呼吸の合計回数(AHI)は、睡眠時無呼吸症候群の重症度を知るために重要な指標の一つです。
睡眠時無呼吸症候群の重症度は次のように定められています。
軽症 : 5~15回
中等症 : 15~30回未満
重症 : 30回以上
AHIが20回を超える状態は、生存率にも大きな影響を与えます。重症の睡眠時無呼吸症候群を放っておくと、8年後の生存率が63%にまで低下するといった報告もあるのです。(※3)
子どもの睡眠時無呼吸症候群が増えている
睡眠時無呼吸症候群は大人に発生する病気といったイメージがありますが、子どもが睡眠時無呼吸症候群を発症するケースが増えています。
子どもは昼間の眠気を上手に訴えることが難しく、睡眠時無呼吸症候群があっても見過ごされることが多いとされています。特に、乳幼児の睡眠時無呼吸症候群は突然死に繋がる場合があるため十分に気を付けましょう。
子どもの睡眠時無呼吸症候群の原因
子どもの睡眠時無呼吸症候群の原因としては、次のようなものが挙げられます。お子さんに当てはまるものがある場合は、寝ているときに大きないびきなどの症状がないかチェックしておきましょう。
- 肥満
- アレルギー性鼻炎、花粉症
- 扁桃肥大
- 慢性的なストレス
肥満や花粉症を抱える小中学生は増えているとされているため、睡眠時無呼吸症候群を抱えているケースも増加すると考えられます。
子どもの睡眠時無呼吸症候群による影響
子どもの発達や成長にとって、睡眠は非常に大切です。睡眠時無呼吸症候群によって子どもの深い睡眠が妨げられると、成長ホルモンが十分に分泌されずに低身長などの発育不足を引き起こす場合があります。特に、乳児が睡眠時無呼吸症候群を発症すると心臓に大きな負担がかかり、乳幼児突然死症候群に繋がるとも考えられています。
また、小中学生の睡眠時無呼吸症候群は、次のような症状の原因となることから、不登校やトラブルに繋がることもあります。
- 昼間のイライラ
- 情緒不安定
- 学力、集中力の低下
- 登下校中の事故
子どもにとって、睡眠の質が悪いことに自分で気付くことはなかなか難しいとされています。
お子さんのいびきが大きい・突然寝てしまうなどの様子に気付いたら、睡眠時無呼吸症候群を抱えていないか調べておくと安心です。
まとめ
睡眠時無呼吸症候群は、それ自体の症状だけでなく、動脈硬化を悪化させることで心筋梗塞や脳血管疾患といった病気を招く恐れがあります。
これらの病気は死に至る場合もある重大な病気であるため、睡眠時無呼吸症候群を放っておくことは非常に危険です。
また、睡眠時無呼吸症候群は居眠り運転による交通事故に繋がる場合もあるため、昼間に突然眠くなる人は注意が必要です。
さらに、近年は子どもの睡眠時無呼吸症候群も増加しています。睡眠時無呼吸症候群の早期発見と正しい治療を行い、合併症や事故による死亡リスクを早めに減らすようにしましょう。